2025/07/04

近年、働き方の価値観は、従来のような、仕事に人生をかけたり、全力で仕事を頑張るという「ハッスルカルチャー(Hustle Culture)」から、「自分らしさ」や「心の安定」を重視する生き方へと移行しつつあります。
その象徴として「静かな退職(Quiet Quitting)」と「カタツムリ女子(Snail Girl)」という言葉をよく耳にするようになりました。
「静かな退職」とは、実際に会社を辞めるわけではなく、仕事に対する意欲や熱意を最小限に抑え、与えられた業務のみを淡々とこなす働き方のことをいいます。
簡単に言えば、「必要以上に頑張らない」「仕事とプライベートの境界線をはっきりさせる」という考え方に基づいています。
「仕事を生活の一部」と捉え、「プライベートの時間を充実させたい」と考える人が増えており、「静かな退職」は、自身の心身の健康やプライベートを重視して、持続可能な働き方を模索した結果とも言えます。
特に、このような傾向は、若年層(Z世代など)に強く見られますが、ミドルシニア層にも広がっています。
一方の「カタツムリ女子」は、成功を追い求めるよりも、自分を大切にしながらマイペースで働く女性を意味し、自身の心身の健康や幸福を最優先にして、過度な努力や競争から距離を置くことをいいます。
これは、女性起業家や、リーダーシップを発揮する女性を指す「ガールボス(Girl Boss)」や「バリキャリ女子」とは対照的です。
カタツムリが自分の殻の中にこもり、ゆっくりと自分のペースで進むように、彼女たちもまた、外部の評価や社会の期待に振り回されず、自分にとって心地よいペースや環境で生活することを重視します。
このような「静かな退職」や「カタツムリ女子」の広がりは、現代社会の課題への反発ともいえ、一考に値するといえます。
例えば、必要以上に頑張らないスタンスは個人の健康維持に、ワークライフバランスの重視は人生の質を高め、不透明なキャリアパスと評価には抵抗し、多様な生き方を選択することで「仕事=成功」という画一的な価値観から解放されます。
企業側はこうした変化に対応した柔軟な働き方を模索する必要があり、従業員がなぜそのような働き方を選択するのか、その背景にある不満や要望を真摯に受け止めて、対策を講じる必要があります。
例えば、適切な人事評価制度を整備して、頑張りが正当に評価される仕組みを作り、ワークライフバランス支援として柔軟な働き方や休息を推奨し、コミュニケーションを活性化して心理的安全性の高い職場環境をつくり、キャリア形成支援として従業員の成長をサポートするなどです。
しかし、その一方で、これらの広がりには、社会全体として懸念される点も少なくありません。
個人側も、自身の働き方が将来のキャリアや人生設計にどのような影響を与えるのかを冷静に考え、単に「楽をする」だけでなく、自分にとっての「最適解」を見つける努力が求められます。
大切なのは、個人の幸福と組織の成長、そして社会の持続可能性とのバランスを見つけることだといえますね。
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「静かな退職」や「カタツムリ女子」といった多様な働き方や生き方が広がる中で、「個人の視点」に偏らず、「社会全体としての視点」も同時に持ち合わせていたいものですね。
[ 一般社団法人 目白心理総合研究所 ]
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