2026/07/01

近年、多くの企業や組織でコンプライアンスやハラスメント対策が進む一方、現場では「新たな摩擦」が起きています。
それが、コンプライアンスの隙を突いた過剰な権利主張や、ハラスメントという言葉を「盾」にした組織への抵抗です。
現場ではいわゆる「逆ハラスメント(Reverse harassment)」の一種として捉えられることも多い問題ですが、実は海外の人事トレンドでも、こうした制度の悪用は「ハラスメントの武器化(Weaponized harassment)」と呼ばれ、非常に注目されています。
つまりその本質は、正当な業務指導から逃れるために、コンプライアンス制度を「自己防衛の武器(盾)」として悪用してしまう点にあります。
当研究所では、この現場を疲弊させる問題について、2026年11月開催の「第36回日本産業衛生学会全国協議会」の自由集会にて取り上げます。
国際EAP協会日本支部理事であり、同支部ブロードブラッシュ推進委員会の委員長を務める当研究所代表の企画として、当日は『ハラスメントという盾をどう外すか ― ケースから考える、ハラスメント通報を「成功体験」にさせない戦略的コンサルテーション』と題して登壇・発表いたします。
今回のナレッジでは、学会でのケース検討に先駆け、ハラスメント通報の背景にある構造と、組織が取るべき戦略的アプローチの本質について解説します。
1. 現場を疲弊させる「不適切な成功体験」の正体
正当なハラスメント被害が守られるべきであることは言うまでもありません。しかし、現場のリアルなケースを分析していくと、以下のような歪んだ構造が生じているケースが少なくありません。
■ 指導へのカウンタートーク
正当な業務指導や評価を受けた部下が、「それはパワハラです」と主張することで、指導側の口を封じようとする。■ 組織の「事なかれ主義」の悪用
問題が大きくなることを恐れる人事や経営陣が、事実関係の精査を十分に行わないまま、安易に指導側の管理職を異動させたり謝罪させたりしてしまう。このように事実に基づかない、あるいは過剰な主張によって自身の要望が通ってしまう環境は、当事者に対して「ハラスメントと騒げば、組織をコントロールできる」という『不適切な成功体験』を与えてしまいます。
その結果、現場の管理職は萎縮し、正当な組織統治力(ガバナンス)は失われ、周囲の真面目に働く社員のモチベーション低下(働きがいの喪失)を招くという、最悪のパラドックスが発生するのです。
2. なぜ「心理学とEAPの知見」が不可欠なのか
この問題の難しい点は、単なる法律の解釈(リーガルチェック)だけでは解決できないという点にあります。なぜなら、過剰な権利主張の背景には、当事者個人の「承認欲求の歪み」や「他責的傾向」、あるいは「孤立感」といった深い心理的メカニズムが働いていることが多いからです。
また、組織側にも「意見を率直に言えない風土(心理的安全性の欠如)」や「制度が形骸化している」といった構造的な要因が存在します。
リーガル(法律)の視点が「白黒の判定」を下すものであるならば、私たち心理・組織支援(EAP)の専門家のアプローチは、「なぜその摩擦が起きたのか」という背景の心理・動力を解き明かし、現場の機能不全を根本から修理することです。
3. 組織の統治力を回復するための3つの戦略
安易な通報を不適切な成功体験にさせず、現場が健やかに機能するための仕組みを創るには、以下のステップが極めて有効です。■「事実」と「感情」の厳密な切り分け
通報があった際、組織は迅速に対応しつつも、相手の「不快だ」という感情の訴えと、実際に行われた「客観的事実」を冷徹に切り分けるヒアリングのスキームが必要です。■ 管理職への「マネジメント・コンサルテーション」
萎縮する管理職に対し、「どこまでが正当な指導か」の基準を明確にし、心理的なバックアップを行うことで、現場の指揮系統を崩壊させない支援を行います。■ 通報の「出口」の再設計
単にどちらかを処分して終わり(事なかれ主義的解決)にするのではなく、EAP(従業員支援)の仕組みを活用し、当事者の認知の歪みへのアプローチや、配置換先での再適応までを見据えた「実効的な並走」を設計します。誰もが健やかに、働きがいを持てる組織へ
施策や制度を動かすのは、すべて「人間」です。制度の隙間で発生する「人と人との摩擦」を心理学の知見で解消し、正当な統治力を回復させること。
それこそが、一過性の研修では成し得ない、持続可能な組織づくり(健康経営やSDGsの推進)の基盤となります。
当研究所では、国際基準のEAP(従業員支援)と心理学の知見に基づき、こうした職場の複雑な人間関係トラブルを解決するためのコンサルテーションや組織支援を行っています。
「何から手をつければいいか分からない」という段階でも、現状のヒアリングから具体的な解決のステップまで丁寧に並走いたします。
まずは貴組織のリアルな課題をお聞かせください。
関連する取り組みのご案内
当研究所の「社会貢献・実践研究事業」では、こうした現場の実践やケース検討から得られた知見を活かし、学会発表や内閣府プラットフォームでの分科会を通じて社会へ還元しています。
この公的な場で認められた確かな解決ノウハウは、個別の企業・組織様向けのコンサルテーションや組織支援にも直接活かされています。
「うちの職場のこのケースはどう対応すべきか」「ハラスメント通報の出口をどう再設計すればいいか」など、具体的な課題を抱えておられる人事担当者・経営層の皆様は、どうぞお気軽に当研究所までご相談ください。
貴組織の現状に合わせた実効的な解決ステップを共に設計いたします。
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