2025/08/13
近年、メンタルヘルス対策の重要性はますます高まっています。各企業では、ストレスチェックの実施、研修、相談窓口の設置、産業医や外部専門機関との連携など、さまざまな取り組みが行われています。厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、63.8%の企業が何らかのメンタルヘルス対策を実施しています。しかし、残念ながらその効果はまだ顕著には表れていないようです。
データから見るメンタル不調者の推移
同調査の「事業所調査」によれば、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続して1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%(令和4年調査では10.6%)、退職した労働者がいた事業所の割合は6.4%(同5.9%)でした。さらに、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は0.6%(同0.6%)、退職した労働者の割合は0.2%(同0.2%)となっています。
企業担当者対応の課題
メンタルヘルス対策は行っているものの、思うように浸透・定着していないと感じている企業担当者も少なくないのではないでしょうか。メンタルヘルス対策は、うつ病や適応障害などの精神疾患を未然に防ぐための取り組みと思われがちですが、病気の予防にとどまらず、心の健康と安定を維持するための施策でもあります。これは、症状が現れてからではなく、日常的な取り組みが必要です。セルフケア(自分自身の精神状態を把握し、ストレスに気づき、対処すること)はもちろん重要ですが、管理監督者や人事担当者がメンタルヘルスに関する適切な知識を身につけ、部下の異変に気づき、サポート方法を学ぶなど、意識を高めることも求められます。
課題解決のカギ~EAPの活用~
EAP(Employee Assistance Program)の役割は、単に外部専門家が従業員のメンタルヘルスケアを直接担うことだけではありません。依頼に応じて管理職や人事労務担当者への助言・指導・教育のほか、企業へのコンサルテーションも行います。専門知識を有するEAP担当者から研修やアドバイスを受け、社内担当者がスキルを向上させていくことも、効果的なメンタルヘルス施策の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者:岡野 康子