胡椒 ~ かつてのスパイスの王様 ~

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胡椒 ~ かつてのスパイスの王様 ~

今ではスーパーで安く手に入る「胡椒(コショウ)」ですが、かつては「スパイスの王様」として君臨していたのをご存知でしょうか。

「胡」とは中国西方の異民族を、「椒」とは山椒のことを指す、すなわち「胡の国から伝わった辛いもの」として、中国で名づけられた名前が日本でもそのまま使われています。

「胡椒」の種類には、「黒胡椒(ブラックペッパー)」や「白胡椒(ホワイトペッパー)」のほか、「グリーンペッパー」や「ピンクペッパー」などもありますが、実は、これらの味、香りの違いは、収穫後の処理の仕方に起因しています。

例えば、緑色の未熟果を皮ごと天日に干して乾燥させると、辛みや香りが強くなって肉料理によく合いますし(「黒胡椒」)、赤く熟した実を1週間程水に浸して発酵させ、柔らかくなった外皮をはがして核のみを乾燥させると、魚料理に合うマイルドな味わいになります(「白胡椒」)。

さて、「胡椒」と人類の歴史は古く、紀元前1世紀頃から原産地インドでは医薬品としても使用され、エジプト、ギリシャを経て、ローマ帝国では熱病の特効薬としても、刺激的な嗜好品としても愛好されて、その保有量が権力と財力の証となりました。

そのため、大量に消費された「胡椒」の代価として多くの金銀貨がインドに流出し、ローマ帝国の財政は脅かされて、ウェスパシアヌス帝は制限を命じたほどでした。

その後、ヨーロッパでは12世紀頃から牧草の枯れる冬の前に家畜を屠殺し、保存して食料とする肉食が一般化していきました。

当時は冷蔵技術が未発達だったので、「胡椒」で腐りかけの肉の匂いを消したり、防腐作用として上流社会を中心に多量に使用されたので、数あるスパイスの中でも「胡椒」が最も高い香辛料となりました。

また、ヨーロッパの土地では「胡椒」を育てる事が出来なかったので、「胡椒」は長らくインドからトルコを経由してヨーロッパへ運搬されていました。

このときアラビア商人とヴェネチアやジェノヴァなどのイタリア商人の手を通る際に、「胡椒」の価格が跳ね上げられたことも、高価になった原因といえます。

ちなみに、当時の「一握りの胡椒」は、「同じ重さの黄金」もしくは「牛一頭」と引き換えられるほどの価値があり、さらには、給料や税金の支払いなど、貨幣の代用にも用いられていました。

1453年オスマン帝国が地中海を制圧して東方貿易が困難になると、さらに「胡椒」の価格が高騰したことから、スペインやポルトガルが競って海に乗り出して、後に「大航海時代」と呼ばれる大冒険が始まりました。

1498年「ヴァスコ・ダ・ガマ(Vasco da Gama)」によるインド航路の開拓は、このような政治的・経済的な背景によって、新たな交易ルートを確保するために行われたものでした。

こうしてアフリカを西へ回る新たな航路、つまりアラビアやヴェネチアを経由することなく、東洋とヨーロッパを直接結ぶ交易路が開拓されて以降、スパイスの中継貿易として栄えてきた地中海沿岸の街は斜陽の道をたどる一方で、ポルトガルの栄光の時代が到来しました。

その後は、「スパイスの王様」だった「胡椒」の安定供給が可能となってその価値は下がってしまい、現在では「サフラン」が世界で最も高価なスパイスと言われて、王座を譲ってしまいました。

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今ではとても庶民的な「胡椒」ですが、人類が命がけで獲得してきた歴史に思いを馳せると、お料理が一層奥深い味わいになりますね。




[ 一般社団法人 目白心理総合研究所 ]
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