2025/04/23

私たちは、常にあらゆる判断をしながら行動していますが、その判断は往々にして「認知バイアス」に支配されています。
固定観念や先入観など、様々な「認知バイアス」がありますが、そのひとつに「ダニング=クルーガー効果(Dunning–Kruger effect)」があります。
「ダニング=クルーガー効果」とは、ある特定の分野において能力の限られた人が、自分の能力を過大評価してしまうというバイアスで、1999年にアメリカの社会心理学者デイヴィッド・ダニング(David Dunning)とジャスティン・クルーガー(Justin Kruger)が提唱しています。
簡単に言えば、特に優れているわけではない人が、実際よりも自己を優秀であると認識してしまう心理現象といえますね。
「ダニング=クルーガー効果」を、縦軸は自信、横軸は知識・経験とした曲線で表すことができ、その曲線は横軸に沿って(知識・経験の低い順に)、次の4段階で説明されます。
① 馬鹿の山:自分の能力を過大評価する傾向
② 絶望の谷:自身の無知や能力不足に気づいた状態
③ 啓蒙の坂:自身の能力不足を認識し積極的に学ぼうとする
④ 継続の大地:自分の能力を正確に評価でき、適切に行動できるようになる
さらに、「Revisiting why incompetents think they’re awesome(無能な人が自分を素晴らしいと思う理由を再考する)」という彼らの研究において、能力が低い人の特徴は、能力が不足していることや、それがどの程度不十分なのかを認識できないことが示されていて、日常生活の様々な場面において、次のようなケースに出会うことがあります。
A. 業務知識や経験が浅いにもかかわらず、「この仕事は簡単だ」「すぐに一人でできるようになる」と思い込み、先輩の指導やアドバイスを軽視する。
→ 業務の全体像や難しさを理解できていないため、自分の理解度を過大評価して、必要な知識やスキルを習得する努力を怠ってしまう。
B. 先輩や上司に対して自信満々に自分の意見を主張し、自分の間違いを認めようとしない。
→ 自分の知識の浅さを認識できていないため、自分の意見が正しいと強く信じ込み、他の意見を受け入れない。
C. グループワークでほとんど貢献していない人が、成果発表の際に最も自信満々に話し、自分の功績を誇張する。
→ 自分の貢献度の低さを認識できていないため、グループ全体の成果を自分の手柄のように錯覚してしまう。
D. あいまいな情報源から得た不確かな知識を、さも真実であるかのように自信を持って他人に語る。
→ 自分の知識の正確性を確認する習慣がなく、誤った情報を正しいと信じ込んで広めてしまう。
いかがでしょうか、自分自身や周囲を見回してみると、該当するケースもあるのではないでしょうか。
研究においては、能力の低い者であっても、その能力について実際に訓練を積んだ後であれば能力の欠如を認識できるとされていますので、経験を積むことはとても重要ですね。
一方で、「ダニング=クルーガー効果」とは逆に、周囲の評価は高いのに自己の能力を過小評価してしまう「インポスター症候群」にも注意が必要です。
自己評価が高すぎても低すぎても、その影響は個人だけではなく、組織全体のパフォーマンスや意思決定に重大な影響を及ぼす可能性がありますので、早めの対処が必要です。
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自分の認知バイアスに気づくことは難しいかもしれませんが、意識するだけでも判断や行動に違いが出るかもしれませんね。
[ 一般社団法人 目白心理総合研究所 ]
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